次亜塩素酸水(弱酸性 電解水)次亜塩素酸水(弱酸性 電解水)

次亜塩素酸水の有効性と安全性について

20/06/09 次亜塩素酸水(弱酸性 電解水)

 (2020年6月29日更新)

昨今のコロナ禍により、新型コロナウイルスに有効とされる消毒用アルコールや次亜塩素酸ナトリウムが品薄状態になっています。名前のよく似た次亜塩素酸水にも注目が集まるようになりましたが、よく次亜塩素酸ナトリウムと混同される場合があります。

 ここでは次亜塩素酸水とは何を指し、次亜塩素酸ナトリウムとどう違うのか、当方の見解を述べてみたいと思います。

次亜塩素酸水の定義

 次亜塩素酸水は塩酸または塩化ナトリウム水溶液(食塩水)を電解槽と呼ばれる槽の中で電気分解して作られる水溶液とされています。その製造方法から一般的に「電解水」と呼ばれることもあります。(飲用ではありません。)

 次亜塩素酸水にはpH値によって下記の3種類に分けられます。

  • 強酸性次亜塩素酸水:pH2.7以下(有効塩素濃度10~60ppm)
  • 弱酸性次亜塩素酸水:pH2.7~5.0(有効塩素濃度10~60ppm)
  • 微酸性次亜塩素酸水:pH5.0~6.5(有効塩素濃度10~80ppm)

 これらはいずれも次亜塩素酸(HOCl)を主成分とする水です。強酸性次亜塩素酸水のpHは下限が示されていませんが、pHが2.2以下になると塩素ガスの放出が増えることから事実上pH2.2が下限となっています。

 そして厚生労働省では上記の条件で生成された次亜塩素酸水を「食品添加物殺菌料」として定義しています。(原料である塩酸や塩化Naにも規定があります。)

 また、NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)は経済産業省からの要請を受けて、電気分解で生成された次亜塩素酸水を新型コロナウイルスに有効である可能性がある消毒方法として実証試験を行うと公表しました。

 2020年5月29日時点では新型コロナウイルスへの有効性は確認されていない、との経済産業省の見解でしたが、効果にはバラツキがあり、濃度が高い次亜塩素酸水では有効性が確認出来ております。今後も検証は続けるとのことなので、現時点では結果待ちということになります。

電解方式以外の次亜塩素酸水

 上記の電解方式とは違った方法で生成され、次亜塩素酸水(水溶液)とよばれるものも存在します。

 実際によく見かけるのは次亜塩素酸ナトリウムの水溶液をpH調整、または希釈して次亜塩素酸水(水溶液)とする製品です。またパウダーなどの粉末、錠剤などの固形材料を水に溶かして次亜塩素酸水(水溶液)とするものもあります。

 これらは次亜塩素酸を主成分とする水溶液です。厚労省などで定義されているものとは違うので厳密には次亜塩素酸水ではないと言えます。

 とはいえ、次亜塩素酸が主成分なのでその有効性や安全性は電解方式と同等です。誠実なメーカーはそれを実証するために第三者機関に依頼してで実験・検証を行い、有効性・安全性を確認しています。

 そんな中、生成法が明記されていなかったり、安全性も根拠が不明なメーカー・製品も多いことから経産省は注意を促しました。とんでもないことに誠実なメーカーの製品も同様に捉えられて、誤解されています。

よく間違えられる次亜塩素酸ナトリウム次亜塩素酸水の違い

 次亜塩素酸ナトリウムは、化学薬品として水道やプールの殺菌や家庭で使う塩素系の漂白剤や殺菌剤にも使用されており、次亜塩素酸水同様、殺菌成分である次亜塩素酸が含まれています。

 端的に言うと次亜塩素酸ナトリウム次亜塩素酸水の違いはpHです。厚生労働省の【次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性 に関する資料】の中の図にも示されるように次亜塩素酸ナトリウムの主成分である次亜塩素酸イオン(OCl‾)と次亜塩素酸水の主成分である次亜塩素酸(HOCl)は元々は同じものです。しかしながらこれらはpHによって変化する成分でpHが高くなれば右側の次亜塩素酸イオン(OCl‾)へ、pHが低くなれば左側の次亜塩素酸(HOCl)へ変化します。

厚生労働省【次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性 に関する資料】より抜粋


厚生労働省【次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性 に関する資料】


 次亜塩素酸(HClO)は次亜塩素酸イオン(OCl‾)の数十倍の殺菌力があり、次亜塩素酸水は次亜塩素の存在比率が高いため次亜塩素酸ナトリウムよりも高い殺菌活性を示します。しかしながら濃度が低いため効果を発揮すると同時に活性が低下してしまいます。


 そして次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリのため直接触れると肌が荒れてしまいますので手袋をするように注意書きがされています。さらに酸性タイプのクリーナーなどと混ぜると有毒ガスを発生します。他にも誤飲事故など報告されていますので家庭での使用は細心の注意が必要です。

 一方、次亜塩素酸水は肌への影響が少ないのが特徴です。誤って飲んでしまっても影響は少なく気軽に使うことができます。また消臭効果もあるのでニオイの気になる場所へ簡単に噴霧できます。


 また、 NITEが行う新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について~ にも違いが記載されています。

安全性・効果が確かな次亜塩素酸水の見分け方

 電解方式以外の次亜塩素酸水の製品の中には成分表や生成方法などが記載されていないものもあり、それらに関しては有効性や安全性は不透明です。

 成分表に次亜塩素酸ナトリウムやpH調整剤など記されている場合は次亜塩素酸ナトリウムの混合液を次亜塩素酸水としている場合がほとんどでしょう。

 正しい生成方法で作られた次亜塩素酸水でも効果を発揮した後はすぐ普通の水に戻ってしまいます。つまり保存する容器や環境によって効果の寿命が変わってくるということです。

 電解方式の次亜塩素酸水のように生成してすぐ使えるのなら効果はあると言えますが、液体として販売されている次亜塩素酸水は効果の持続にかなりの幅があるのではないでしょうか。

 粉末タイプの次亜塩素酸水は原料がジクロロイソシアヌル酸ナトリウムで水に溶けると次亜塩素酸が発生します。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは以前から水道水やプールの水を除菌するために用いられ、水に溶解しない限り経年劣化はほとんどありません。

 液体に比べ持ち運びしやすく、保存性もよい事から最近注目されています。

次亜塩素酸水の活用方法

手洗い

 経済産業省は塩酸や食塩水を電気分解した次亜塩素酸水は手指には適用外としていた判断を修正し『一部商品では適用されているものがある』との見解を公表しました。


【2020年4月18日 福井新聞】


 ただし反応速度が速く、効果が長続きしないため流水での使用がより有効と考えます。

物の除菌

 スプレーボトルで次亜塩素酸水を噴霧後、清潔なタオルなどで拭き上げてください。ニオイの原因である雑菌を除去する効果があるので、消臭効果が期待できます。子供の玩具、ペット用品、調理器具、靴・衣類などに使えます。(漂白効果もあるので色落ちが心配なものには目立たない個所で試してから使用してください。)

 菌やウイルスに対する不活性効果は各社が実証試験を行っており、効果も確認されておりますが、薬機法上、具体的なウイルス名は述べられないことになっています。

空間噴霧

 空間噴霧の菌やウイルスへの有効性については、抑制が確認されており、これは世間的にも認められているところです。


 ですが、安全性については確立した評価方法が存在しません。

 そんな中、NITEが次亜塩素酸水の噴霧での利用は安全面から控えるよう公表したとする報道が一部にありましたが、噴霧利用の是非についてNITEが何らかの見解を示した事実はありません。

 またWHOの見解が「COVID-19について噴霧や燻蒸による環境表面への消毒剤の日常的な使用は推奨されない」さらに「消毒剤を人体に噴霧することはいかなる状況であっても推奨されない」とあります。ですが消毒剤については厚生労働省のQ&Aで次亜塩素酸ナトリウムのことだという答えです。


 厚生労働省【「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について(令和2年3 月6日付事務連絡)」に関するQ&Aについて】


 当方では次亜塩素酸水の供給元メーカーのマウスによる経口毒性の実験結果や原材料の安全データシート等の技術資料から人体には影響が極めて少ないと判断しております。

 実際に自分たちでも2年以上勤務時間に噴霧をして体調を崩したり、気分が悪くなったという事例はなく、さらに各方面へ販売もしてきましたがそういった報告は受けておりません。

まとめ

 6月11日には次亜塩素酸水溶液普及促進会議が次亜塩素酸水の新型コロナウイルスに対する有効性や空間噴霧の安全性を訴え会見を開きました。
 またアメリカや中国など海外での採用例も確認できております。

   海外採用例:大量空間噴霧の実際と可能性海外採用例


 次亜塩素酸水は濃度と使用方法を守れば安心して除菌に使用できます。
また新型コロナウイルスに対してもNITEが継続して検証が行うことも表明しています。これからのwithコロナの新しい社会づくりのために次亜塩素酸水を活用してゆければと思います。

 追記:6月26日にNITEが新型コロナウイルスに対して次亜塩素酸水が有効であるとの報告をしました。今後ますます活用の場が広がると期待されます。

   NITE報告:新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について最終報告

ファイルのアイコンこの記事を書いた人

㈱岡部機械工業 梅山 和久衛生管理者の資格を取得してから5年以上。徳島の岡部機械工業で社内の衛生パトロールを行い、職場環境の改善に取り組んできた。職場の環境衛生を整えることによって、健康優良法人に選ばれました。働くうえでは健康が何よりも重要だと思い、環境衛生について日々研究している。